立てば芍薬、座れば牡丹、走りだしたらドロップキック
製作物:mylist/70976423
中山競馬場で迎えた有馬記念
精一杯の走りを見せるも順位は16着だった
ターフに響くファンの声援、どこからか聞こえる「頑張った!ハルウララ」の声
心の底から楽しく走れた筈なのに、ハルウララは独りパドックで泣いていた
中央で走れた栄冠、喜び、感動、そして何より暖かい声援・・・
どれも嬉しかった筈なのに、心を埋め尽くすのは勝てなかった悔しさだった
トレーナーが見守る中ハルウララは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、ハルウララははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいダートの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃ」ハルウララは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、ハルウララはふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
本馬場入場したハルウララが目にしたのは、通路まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに競馬新聞が振られ、地鳴りのようにファンファーレが響いていた
呆然とするハルウララの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ウララちゃん、ゲート入りですよ、早く行きましょう」声の方に振り返ったハルウララは目を疑った
「す・・・スペちゃん?」 「どうしましたウララちゃん、居眠りでもしてました?」
「え・・・エルちゃん?ヨーロッパに行った筈じゃあ?」 「なんだウララ、かってにエルを欧州遠征させやがって」
「トレーナー・・・」 ハルウララは半分パニックになりながら掲示板を見上げた
1番:エルコンドルパサー 2番:グラスワンダー
3番:タイキシャトル 4番:スペシャルウィーク
5番:マルゼンスキー 6番:セイウンスカイ
7番:シンボリルドルフ 8番:トウカイテイオー
9番:メジロマックイーン 10番:サイレンススズカ
11番:キングヘイロー 12番:ダイワスカーレット
13番:ウォッカ 14番:オグリキャップ
15番:ゴールドシップ 16番:ハルウララ
暫時、唖然としていたハルウララだったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
ゲートへ全力疾走するハルウララ、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、横浜スタジアムで冷たくなっている内川が発見され、村田と吉村は病院内で静かに息を引き取った
ゴルシマン
